ニコンFマウントの互換性

おはようございます。

今朝はまた小雨模様の関西です。
ずっと雨でしたので洗濯物がたまって大変です。
干しておかないとそろそろえらいことになりますので、小雨でしたが思い切って干してきました、
屋根付きのベランダだから雨で濡れることはないだろうけれど、乾かないだろうなぁ・・・。

さて、コメントでマパさまよりニコンデジタル一眼レフの露出計連動についてのご質問をいただきました。
このあたり、なかなか難しい問題であります。
コメント欄でのご回答ではスペース的に足らないことは必至ですので、思い切ってエントリで取り上げることにいたしました。
よって、今回はずっと技術的な内容がずーっと続くことになります。(^^;
ご興味を持たれた方はどうぞ・・・ということで、今朝、実家の庭で撮りました紫陽花の写真を先にアップロードいたします。
大雨があがれば額紫陽花が咲いていました。
もうそんな季節なんですね。
だんだんと梅雨の足音が聞こえてくるような気がします。

f0221280_1054264.jpg額紫陽花


カメラはニコンD50、レンズはAF24-120mm、F3.5-5.6Dです。
もっと寄れるレンズがあればいいのですが、このレンズ常用には極めて便利ですが、望遠端で絞り開放だとかなり甘くなります。
ポートレートだと顕著ですね。
今日はこれしか持っておりませんでしたので、とりあえず、という事にします。
またα-7DIGITALとタムロンマクロModel-52BBの出番ですね。


さて、ここから先は延々とニコンのお話になります。(^^;
長くなりそうで恐縮なのですが、自分自身の備忘録としてもまとめたいと思っていましたので千載一遇のチャンスを頂戴いたしました。

まず、ニコン一眼レフのマウントは「不変」のFマウントです。
2010年6月でFマウントのレンズが発売されて51年目を迎えます。
1つのマウントとしては世界最長らしいです。
ところが、51年の間に「自動露出」や「オートフォーカス」や「デジタル化」などが進みまして、その時代に応じて付帯する情報連動用の機構も変化していくことになりました。
ここがややこしいところです。

よく見かけるものを時代をおってまいりましょう。

○オートニッコールなど、カニ爪で露出計を連動
f0221280_1118241.jpg


先日、モノクロームの日にアップロードいたしましたニコマートELの写真の再掲です。
レンズ上部に蟹の爪のような連動機構があり、その中にピンがはさまっているのがお分かりいただけると思います。
爪はレンズ側、ピンはカメラ側に取り付けられていて、レンズを装着するとその絞り位置の情報をカメラ側に伝えて露出計を作動させます。
この爪を通称「カニ爪」とよんでおり、ボディ側のピンを「露出計連動ピン」とよびます。
ニコマートなど古いニコンの一眼レフはこのカニ爪が取り付けられたレンズでないと露出計が作動しません。
このカニ爪方式は「絞りの絶対値を伝える」システムです。
したがって、必ずF5.6の位置に取り付けられています。

○絞りの相対値を伝えるAi連動方式の登場
カニ爪は絞りの絶対値を伝える方式ですので、自動露出に対応させるにはなかなか難しいです。
ですので、ニコンも別の方法を検討し、採用されたのが絞り環に露出計に連動するガイドを取り付けて自動露出(この時代は絞り優先オート)に対応させる方式であります。
このあたり、詳しいことを解説してあるサイト様を後ほどご紹介します。
これをAi方式とよんでいます。
当時は全て機械連動で行っていましたので、「機械連動式Ai」とも言います。
後のニコンのカメラは全てこのAi連動式になりました。
ニコンらしく、カニ爪で露出計を連動させる旧型のカメラ(ニコマートなど)にも対応できるようにカニ爪を取り付けてある意匠です。
Ai方式のボディしか使用しないのであればこのカニ爪は必要ありませんので、取り外しても大丈夫です。
ただし、非Ai方式である旧型のレンズをAi方式を採用しているボディで使用するためには絞り環をAiに対応させるように交換する必要があります。
無理に取り付けると壊れます。
このAiに対応させる改造をニコンは近年まで行っており、通称「Ai改造」とよんでいます。
Ai改造されたレンズを「Ai改ニッコール」と記載したりします。
Ai改造はできるレンズとできないレンズがあり、自分の手持ちでは105mmはAi改造をしましたがオートニッコール50mm、F2は改造不可能でした。

○AFカメラの登場
ニコンのFマウントは大きな変革点を向かえます。
AFボディの登場です。
ニコンF-501、ニコンで初となる完全AF電子制御化されたカメラです。
もっとも、その3年前にニコンF3AFが発売されていましたが、これは専用ファインダと専用レンズの組み合わせのみでしかAFが作動せず、汎用とは言い難い実験機でした。
よって、初のAFボディはF-501と言うことにいたしましょう。
完全に電子制御、そして、ボディ内モータによるAFコントロール。
この機能を実現するためにはレンズ内にもCPUを設置し、相互制御によりAFを実現せねばなりません。
ニコンのマウントはFマウントのままに「電子接点」を実装することになりました。
当時のレンズはそれでもAi方式にも対応をしていました。(ここがニコンらしい)
以降のレンズマップはどんどんAF化していくものと予想され、しかし、プロのカメラマンではニコンF2、F3というマニュアル機が絶対の信頼感を持って未だに使用されているわけです。
よって、Ai方式を捨てることは当時のニコンにはできなかったものと思われます。
AFでありながらも、マニュアル機に取り付けた場合通常のAiレンズとして機能すること、これが当時のAFレンズの命題でした。
よって、当時のレンズには「AiAF」という機能が実装され、最小絞りでロックしないとAFとプログラムAEが作動しない、という機構でした。
逆に、ニコンF2などのAiボディに取り付けた場合は最小絞りロックを解除して普通に使用できる構造です。
ニコンのAFレンズは長年この方式をとっていました。

○マルチパタン測光の改良
F-501によるAF化の3年前、1983年。
ニコンは世界に先駆けて多分割測光を実装したカメラをリリースします。
ニコンFAの登場です。
5分割に画面を分け、それぞれの光情報を参照し、マイコンで演算してデータベースを参照、最適な露出値を与えるという画期的なものでした。
今でこそ多分割測光は各社に採用されている機構ですが、多分割としてはニコンが初でした。
(上下2分割はミノルタが採用していた実績があります)
満を持してリリースされたニコンF4にはAF、AE、機械制御式と考えられるだけの機能が実装されていました。
現在においてもニコンの数あるボディ群の中で「一番レンズの互換性がある」ボディはF4なのであります。
そして、登場したのがF90で初採用された3Dマルチパタン測光です。
これは露出決定においてピントが合っている被写体までの距離も露出決定の参考にする、というものです。
ピントが合っている位置の情報を知るためにはレンズ内に距離エンコーダと呼ばれるものを実装していなければなりません。
よって、以降のAFレンズには距離エンコーダを実装するようになりました。
これを「Dタイプ」と呼んでいます。
そして、ニコンの測光方式は熟達を極め、ニコンF5において「3D-RGBマルチパタン測光」を実装させるまでになりました。
測光にRGBセンサを連動させ、光学情報の中の色を識別、演算の参考にするという機能です。
例えば、真っ黒の被写体の場合、通常は露出補正をしなければなりませんが、RGBマルチパタン測光の場合は「黒色」ということを認識していますのでマイナス補正無しで適正露出を当ててくる、という機能です。

○デジタル化
ニコンはニコンD1をリリースしました。
誰もが待ち望んだデジタル一眼レフニコンの登場であります。
当時の価格は凄まじい値段ではありましたが(値段を考えれば)大ヒットとなりました。
ニコンD一桁機の登場です。
このD1はもともとニコンF5をベースとして設計されており、測光方式、AF機能も準ずるものと考えて差し支えありません。
しかし、当時の技術(そんなに昔じゃないんですけどね)ではフィルムサイズと同じ大きさの映像素子を搭載するのは難しく、やや小さめの画素となったわけです。
よって同じレンズを使っても画角が微妙に変化し、「使いにくい」という声も多数ありました。
いわゆるAPS-Cサイズの画素を使った場合、画角は約1.5から1.6倍となることは今や常識でありますが、当時は受け入れ難い仕様であったのかもしれません。
しかし、それについては望遠側に画角が伸びるわけで、高価な望遠レンズを用意しなくても良い、という点で歓迎する向きがあったのも事実です。
キャッチコピーで「一歩寄れる強さ」などというものがありましたが、メーカ側が積極的に利点をアピールしていたのでしょう。
APS-Cサイズの画素を実装しているカメラは通常の35mmフィルムサイズと比べて必要な光の大きさが小さいです。
ということで、レンズのイメージサークルをわざとAPS-Cサイズに合わせて小さくし、軽量コンパクトに仕上げた「デジタル専用レンズ」が登場するようになりました。
デジタル専用レンズはイメージサークルが小さいので、フィルム用の一眼レフに取り付けた場合、四隅の光量が不足してしまいます。
もともとフィルムサイズのカメラには不向きであって、「フィルムカメラには取り付けられることはない」を前提にした設計思想になりました。
今までニコンはAiボディに対応するために絞り環を実装させていましたが、完全電子制御のデジタルボディにしか使わないのであればAi連動機構も絞り環すら必要ありません。
したがって、だんだんとデジタル時代を見越してAiボディ対応のレンズからデジタル用、あるいは絞り環無しでも問題ない完全電子制御用のレンズへとシフトをしていったのです。


以上、ニコンのレンズの歴史でありました。
これをふまえまして、デジタル一眼レフにおけるマニュアルレンズの対応を考えていきたいと思います。


マパさまのご質問は以下の通りです。
コメント欄のご質問をペーストいたします。

>D50の露出計とD300のそれとは違うのですか?
>使ったことないですが、ずっとMFレンズをD300で使ってみようと思っているんですよね~。
>D300では使いやすくて?D5000ではダメ?
>この辺はあまり気にしていませんでした。
>教えてくださいね☆


ということですね。

まず、D50の諸元、レンズの項目にはこう記載されています。

・DXタイプAFニッコール:全機能使用可
・D/GタイプAFニッコール(IXニッコールを除く):全機能使用可
・PCマイクロニッコール85mmF2.8D :オートフォーカスおよび露出モードの一部を除く機能使用可
・D/Gタイプ以外のAFニッコール(F3AF用を除く):3D-RGBマルチパターン測光IIを除く機能使用可
・AI-Pニッコール:3D-RGBマルチパターン測光II、オートフォーカスを除く機能使用可
・非CPU AIニッコール:撮影モードダイヤルをMにセット時に可(ただし、露出計は使用不可)、開放F値がF5.6より明るい場合フォーカスエイド可

DXタイプとはデジタル専用レンズのことです。
D/Gタイプとは距離エンコーダ実装のAFレンズのことです。(Gタイプは絞り環なし)
D/Gタイプ以外のAFとはAiにも対応するAiAF方式のレンズのことです。
Ai-PとはCPUを実装しているマニュアルレンズ(Aiレンズ)のことです。
非CPUのAiとは機械連動式AiレンズのことでAi改造も含みます。
非Aiレンズは物理的に装着できません。

これによればCPUを内蔵しているAiレンズ(Ai-Pレンズ)は3D-RGBマルチパタン測光Ⅱは使用できないが、RGBマルチパタン測光は使用できる、ということになります。
もともとMFなのでAFが使えないのは当たり前ですね。
しかし、機械連動式Aiレンズ(Ai改含む)の場合は露出をマニュアルにすると使えるけど、露出計は使用できません、となっています。
絞り込み測光も使えません。
露出計が使用できないのでは写真を撮れない、撮りにくいのは明らかです。
(セノガイドや単体露出計を使って撮影するのはOK)
機構的にAi連動ガイドを持っていない構造のためです。
加えて、測光情報の大半を距離エンコーダなどCPUからの情報に頼っているため、CPUを持たないレンズの場合は「使用不可」としたのだと思われます。

ではD300の諸元を見てまいりましょう。

・DXレンズ:フル機能使用可
・G/Dタイプレンズ(IXニッコールを除く):フル機能使用可(PCマイクロニッコールを除く)
・G/Dタイプ以外のAFレンズ(F3AF用を除く):3D-RGBマルチパターン測光IIを除く機能使用可
・Pタイプレンズ:3D-RGBマルチパターン測光IIを除く機能使用可
・非CPUレンズ:露出モードA、Mで可、開放F値がf/5.6より明るい場合フォーカスエイド可、レンズ情報手動設定でRGBマルチパターン測光、絞り値表示など使用可(非AIレンズは使用不可)

Ai-PタイプレンズはD50と同様ですね。
問題は非CPUレンズです。
この場合の非CPUレンズとはもちろん機械連動式Aiレンズのことを指します。
露出モードAとMで可となっています。
つまり、絞り優先モードが使えます。
これは「Ai連動ガイド」が実装されていることになります。
さらに、レンズ情報手動設定でRGBマルチパタン測光使用可となっています。
CPUで連動される情報は「距離エンコーダによる距離情報」と「レンズの個体性能」「絞りなどの制御情報」があります。
Ai-Pは距離エンコーダを持ちませんがCPUは持っていますのでレンズの個体性能は伝達されることになります。
これに相当する「焦点距離」と「開放F値」をあらかじめカメラに入力しておけば非CPUレンズでも測光が可能になります。

非常にややこしいのですがこういうことになります。


続いてD5000ですね。

・AF-SおよびAF-Iレンズ:すべての機能を使用可能
・モーターを内蔵しないAFレンズのGまたはDタイプ:オートフォーカスを除く機能を使用可能
・モーターを内蔵しないAFレンズのGまたはDタイプ以外:オートフォーカスと3D-RGBマルチパターン測光IIを除く機能を使用可能
・プロネア用IXレンズとF3AF用のAFレンズ:使用不可
・DタイプのPCレンズ:オートフォーカスと撮影モードの一部を除く機能を使用可能
・Pタイプレンズ:オートフォーカスと3D-RGBマルチパターン測光IIを除く機能を使用可能
・非CPUレンズ:オートフォーカス使用不可、露出モードはMを使用可能(ただし、露出計は使用不可)
・開放F値がF5.6より明るい場合フォーカスエイド可能

D5000はD40系の流れを汲む小型軽量タイプのカメラです。
D40はボディ内にモータを持たず、レンズ内のモータで駆動させる方式をとります。
(だから軽くて小型)
ニコンは伝統的にボディ内モータによるAFでしたが、高速なAFを実現するためには動力のロスが大きいボディ内モータよりもレンズ内にモータを置いて駆動させる方が有利です。
キヤノンはもともと初代EOSよりレンズ内モータを採用していました。
よってニコンもレンズ内にモータを実装するレンズを多数開発し、D40にはあえてボディ内にモータを持たない仕様を取り入れました。
D40、D40x、D3000、D5000などではボディ内にモータを持ちませんので、レンズ内モータのレンズでしかAFが使用できません。
AiAFなど初期のAFレンズではMFでしか使用できないことになります。
また、非CPUレンズ(機械連動式Aiレンズ)でもD50と同様で、マニュアルモードでは写真は撮れますが露出計の使用ができません。

急ぎ足でしたがD50、D5000、D300の使用できるレンズの比較をいたしました。
ご質問のMFレンズをD300で使えるかどうか、Ai方式のレンズですとあらかじめレンズ情報(焦点距離と開放F値)をカメラに入力設定することにより使用できます。
CPUを持つMFレンズAi-Pタイプですとあらかじめの入力は必要なく使用できます。
オートニッコールなどの非Aiレンズはそもそも装着できません。
ということになりますね。
D5000にはMFレンズ(機械連動式Aiレンズ)は装着できても露出計が使用できません。
Ai-Pタイプは機能に制限がありますが使用できます。
ということになります。
機械連動式Aiレンズを装着して露出計が作動しないのはD100とDフタ桁機、Dヨン桁機です。
露出計を作動させるためのAi連動ガイドを持ちませんので仕様として仕方のないことです。
残念ながら絞り込み測光も使えませんので、事実上、写真を撮るのは難しいと言うことになります。

最後ですが、参考にさせていただいたサイト様をご紹介します。

キンタロウさま 決定版(?) ニコンFマウント解説
実に素晴らしく解説されておられます。
ここを見れば一目瞭然で、自分などは足下にも及ばない分類でございます。
特に「Fマウント体系図」と「Fマウントレンズ分類」は本家ニコンのサイトよりもはるかに分かりやすいので、ニコンのレンズでお悩みの方は必読です。

貧乏カメラ館さま タムロンの交換マウント
以前にもご紹介いたしましたが、タムロンの交換式マウントであるアダプトール2マウントの解析をされておられます。
ニコンのカニ爪式とAi式の考察は参考になります。

参考文献
Nikon Nice Shot 1989年発行第4版
高校生の時、F-801AFを購入してユーザ登録をしていただいた本。
写真の撮り方とニコンの歴史が書いてあります。
機種の発売年は公式としてここに記載されていたものを使いました。
[PR]
by intellistation-e | 2010-05-26 13:08 | カメラ・レンズ